当行は、環境・気候変動への対応を重要課題と捉え、2021年10月に気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)提言※1への賛同を表明しました。同提言に則った当行の取組みは以下の通りです。

  • (※1)気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)とは、気候変動を世界的課題と位置づけ、金融安定理事会(FSB)によって2015年に設立された国際的な支援組織。金融市場安定化の観点から、 気候変動のリスクと機会に基づく財務面への開示を提言している。
ガバナンス
  • 当行ではサステナビリティ経営に関する取組みをさらに推進・強化するため、取締役会の監督のもと、サステナビリティ関連施策を推進する体制を構築しております。
  • 頭取を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し半年に1回以上の頻度で開催し、気候変動を含む環境・社会に係る機会及びリスクへの対応方針や取組計画等を 策定・実行しております。また、重要な事項については取締役会へ報告・付議しております。
  • 2020年4月には、「百十四銀行 環境方針」を策定し、当行の環境に関する方針を明文化しております。
  • また、サステナビリティ経営の更なる推進に向け、2023年度以降の役員報酬については、 サステナビリティ経営に関する目標(CO2排出量削減、女性管理職比率向上等)の達成状況を加味しております。
百十四銀行 環境方針
戦略
  • 当行グループがマテリアリティの1つとして掲げている「気候変動等、環境課題への取組み」については、 中長期的な目線でお客さまや地域の気候変動対策や脱炭素社会への移行を支援することが、 金融機関にとってビジネス機会の創出・拡大につながると認識しております。当行は、気候変動に伴うリスクと機会が事業活動に与える影響を認識し、 適切なリスク管理を行うとともに、お客さま・地域の移行を支援するために、金融・非金融の両面から様々なソリューションを提供しております。
    【当行が認識する機会及びリスクについて】
    種類 想定される事象と影響 時間軸
    機会
    • ・再生可能エネルギー事業へのファイナンス
    • ・お客さまの温室効果ガス排出削減支援
    • ・環境負荷軽減を目的としたサービスの提供等

    短期~中期
    短期~長期
    短期~中期

    リスク 移行リスク
    • ・気候関連の政策・規制強化
    • ・脱炭素に向けた技術革新の進展等の影響を受けるお客さまに対する信用リスクの増加等

    中期~長期
    中期~長期
     

    物理的リスク
    • ・異常気象に伴うお客さまの資産の毀損
    • ・事業活動の停滞による信用リスク及び当行の営業店舗等の損壊等によるオペレーショナルリスクの増加

    中期~長期
    中期~長期
     

    短期:5年程度、中期:10年程度、長期:30年程度
  • ■気候変動に伴う「機会」への対応
    • ・中長期的な目線でお客さまや地域の気候変動対策や脱炭素社会への移行を支援することは、金融機関にとってビジネス機会の創出・拡大につながると認識しており、 お客さま・地域の移行を支援するために、金融・非金融の両面から様々なソリューションを提供しております。 また行内で、環境省が認定する「脱炭素アドバイザーベーシック」の資格取得者を増やしており、お客さまの脱炭素に向けた取組みを支援する担い手の育成にも積極的に取り組んでいます。
    • 【環境課題解決に向けたファイナンス(金融面)】
      • ・お客さまの脱炭素経理や環境配慮に向けた取組みに資する資金調達への対応として、ファイナンス商品ラインナップの充実を図るとともに、提供しています。
      • 114グリーンローン
        • ・再生可能エネルギー設備や持続可能な水質資源及び排水管理設備の導入等、資金使途をグリーンローンプロジェクトに限定した融資商品です。 グリーンローン原則2020に整合しています。
      • 114サステナビリティ・リンク・ローン
        • ・SDGs・ESGに関する挑戦目標であるサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を設定し、その達成状況により適用金利優遇等を行う融資商品です。 サステナビリティ・リンク・ローン原則2021に適合しています。
      • 114ポジティブ・インパクト・ファイナンス
        • ・企業活動が環境・社会・経済のいずれかに与える影響を包括的に分析・評価し、ポジティブなインパクトの創出又はネガティブなインパクトの低減に資するKPIを設定する 融資商品です。ポジティブ・インパクト金融原則に適合しており、レポーティングについて外部評価機関によるセカンドオピニオンも実施しています。
    • 【地域の脱炭素化支援(非金融面)】
      • 114SDGs取組支援サービス
        • ・SDGsへの取組み状況を評価し、結果のフィードバックを通じて環境を始めとするSDGsへの啓蒙をご支援しています。
      • 百十四カーボンニュートラル取組み支援パッケージ
        • ・CO2排出量診断、排出量削減施策のご提案、及びカーボンクレジットの活用等まで含め、提携先とも連携しながら最適なコンサルティングメニューをご提供しています。
  • ■気候変動に伴う「リスク」への対応
    • 【シナリオ分析】
      • ・当行では気候変動による財務影響について、定量的なシナリオ分析を実施しています。 以下の分析の結果、物理的リスク・移行リスクによる財務影響は限定的であると評価しています。 ただし一定の前提条件を仮定した分析であることから、引き続き分析手法の高度化や対象範囲の拡大に取り組んでまいります。
        移行リスク 物理的リスク
        シナリオ IEA(国際エネルギー機関)の2℃シナリオ及び1.5℃シナリオ IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の2℃シナリオ及び4℃シナリオ
        分析手法 炭素税が導入された場合の与信先(ポートフォリオ)の状況等を分析し、当行財務への影響度を試算 当行営業地域全域で2050年までに想定される大規模水害による与信先(ポートフォリオ)への影響を分析し、当行財務への影響度を試算
        分析対象 電力・ガス・海運 当行全与信先
        対象期間 2050年まで 2050年まで
        分析結果 与信費用増加額:最大約63億円(累計) 与信費用増加額:最大約30億円(累計)
        営業店舗等の損失影響額:最大5億円(累計)
  • ■炭素関連資産
    • ・TCFDが開示を推奨する炭素関連資産4セクター(エネルギー、運輸、素材・建築物、農業・食料・林産物)※2の、 当行貸出残高に占める炭素関連資産(再生可能性エネルギー事業除く)の割合は41.2%です。(2024年3月末)
    • ・今後も当該セクターとのエンゲージメントを通じて、サステナブルファイナンスの他、脱炭素に向けた様々なソリューションの提供等に取り組んでまいります。
    • (※2)環境省の業種対応表ベース
リスク管理
  • 当行は、気候変動に起因する移行リスクや物理的リスクが当行の事業運営、戦略、財務計画に大きな影響を与えることを認識し、 統合的リスク管理の枠組みにて、これらのリスクを管理する態勢の整備を進めております。
  • 2020年12月に「環境及び社会に配慮した投融資方針」を定め、環境及び社会の課題解決に向けた事業を支援するとともに、 負の影響が大きい事業や事業者との取引については、その影響の低減・回避につとめております。
環境及び社会に配慮した投融資方針
指標と目標
  • ■CO2排出量の長期削減目標
    • ・気候変動リスクの低減に向けて、事業活動を通じて発生するCO2排出量を中長期的に削減し、政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現に貢献することを目的に、 CO2排出量の長期削減目標を設定しております。
    • ・2021年度のCO2排出量削減実績は、環境に配慮した営業車両の導入や空調の適切な温度管理、再生可能エネルギーの利用等により、2013年度比34.2%の削減となりました。
    • ・2022年度は、一部店舗や研修所・福利厚生施設等を対象に都市ガスからカーボンニュートラル都市ガスへ切替え実施。また、百十四グループ内で使用するごみ袋を、 99%再生材から製造されたごみ袋に切り替える等の取組みを行った結果、2013年度比43.6%の削減となりました。
    • ・2023年度以降は、当行保養施設跡地(香川県さぬき市津田)に建設した太陽光発電設備で発電した電力全量を自己消費し、 事業活動で発生するCO2排出量の更なる削減に取り組んだ結果、2013年度比58.1%減少、2030年度の中間目標を前倒しで達成しました。
    • ①目標
      定義 Scope1及びScope2※3に該当するCO2排出量
      目標
      • 【中間目標】
        2030年度までに2013年度比50%削減
      • 【最終目標】
        2050年までにカーボンニュートラル実現
      • (※3)Scope1:当行自身が燃料(ガソリン等)を燃焼等することにより直接的に発生するCO2排出量
        Scope2:他社から供給された電気等を使用することにより間接的に発生するCO2排出量
    • ②実績
        Scope1
      (直接的排出)
      Scope2
      (間接的排出)
      合計※4 削減率
      (2013年度比)
      2022年度 630t-CO2 4,896t-CO2 5,526t-CO2 ▲43.6%
      2023年度 607t-CO2 3,494t-CO2 4,101t-CO2 ▲58.1%

      • ・なお、2023年度の当行グループ全体のCO2排出量(Scope1・2)の算定結果は、5,212t-CO2となりました。
      • (※4)CO2排出量の算定・開示にあたり、数値の信頼性を確保するため、2022年度排出量実績については一般財団法人日本品質保証機構による第三者検証を取得しています。 また、2023年度実績についても第三者検証取得に向けた手続きを行っています。
        >温室効果ガス排出量検証報告書
  • ■サステナブルファイナンスの長期目標
    • ・投融資を通じて地域やお客さまのサステナビリティ向上への取組みをサポートするため、サステナブルファイナンスの長期目標を設定し、目標達成に向け取り組んでおります。
    • ①目標
      定義 地域やお客さまの環境課題や社会課題の解決に向けた取組みを支援・促進する投融資
      目標
      • 【目標期間】
        2021年度~2030年度の10年間
      • 【目標金額】
        投融資累計額 5,000億円
        (うち環境系 2,000億円)
    • ②実績
      • ・2021年4月~2024年3月末(累計) 1,954億円(うち環境系846億円)
  • ■Scope3排出量把握への取組み
    • ・Scope1及び2については、長期目標を設定のうえ実績を算定してきましたが、2021年度より算定対象にScope3カテゴリ1~14を追加しました。
    • ・更に、2023年度実績から算定対象をScope3カテゴリ15まで拡大しました。算定結果は、お客さまとの対話(エンゲージメント)に活用し、 お客さまのCO2排出量削減をご支援することにより、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

    •  CO2排出量実績(Scope3)

    • (単位:t-CO2)

    算定項目 2022年度 2023年度
    • 1 購入した製品・サービス
    コピー用紙、データ通信費、郵便料金、図書新聞、文房具等 2,719 2,954
    • 2 資本財
    事業用建物、動産、ソフトウェア 4,015 3,531
    • 3 Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動
    購入した電気・蒸気、燃料の上流側の排出 639 600
    • 4 輸送・配送(上流)
    送料(他社輸送、当行が荷主) 109 302
    • 5 事業から出る廃棄物
    廃棄物全般 360 370
    • 6 出張
    雇用者の出張 337 271
    • 7 通勤
    雇用者の通勤 830 889
    • 8~14 リース資産(上流)、輸送(下流)、販売製品加工 等
    (該当なし) (該当なし) (該当なし)
    小計(除カテゴリ15) 9,009 8,917
    • 15 投資
    事業法人向け融資 (未算定) 7,966,196
    合計 7,975,113
    •  スコープの算定方法、排出係数等は「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」 「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」を使用。
      2022年度のScope3(カテゴリ1)の算定方法を見直した結果、実績が2,477→2,719t-CO2となっております。
    • 【Scope3カテゴリ15(投融資)について】
      • ・金融機関にとって投融資による間接的な排出量はScope3の大きな割合を占めており、当行の気候変動への取組みにおいて重要な指標と考えています。 当行では、カテゴリ15(投融資)にかかる排出量について、PCAFスタンダード※5に基づく排出量の算定に取り組んでおり、 2023年度は事業法人向け融資を対象に算定を行いました。
      • ・算定結果は、お取引先さまとの対話(エンゲージメント)に活用し、お取引先さまのCO2排出量削減をご支援することにより、脱炭素社会の実現に貢献していきます。 また、算定対象の拡大や算定手法の精緻化にも継続的に取り組んでまいります(算定方法の見直しやお取引先さまの開示状況等により排出量の算定結果は今後変動する可能性があります)。
      • 〔算定対象〕
        • ・2024年3月末時点の事業法人向け融資(プロジェクトファイナンスは除く)
        • ・なお、算定に必要な財務データ等の不足する先は対象外としており、百十四銀行単体の事業法人向け融資の96%をカバーしております。
      • 〔算定手法〕
        • ・PCAFスタンダード※5に基づき、投融資先各社毎に、以下の算式で算定しています。
        • ・なお、炭素強度は排出量を融資額で除することで算出しています。
      • 〔排出量の把握〕
        • ・投融資先各社の排出量はボトムアップ・トップダウン方式を併用して算出しました。
          • 【ボトムアップ方式】
            各社が開示する排出量を利用
          • 【トップダウン方式】
            各社の売上高に、業種に応じた平均的な排出係数(環境省排出原単位データベースを利用)を掛け合わせて推計
        • ・PCAFの定めるデータクオリティスコアは3.5となっており、今後も情報精度向上に取り組んでいきます。
        • (※5)国際的なイニシアティブであるPCAF(Partnership for Carbon Accounting Financials)スタンダードが作成した、 金融機関の投融資ポートフォリオにおけるGHG排出量を計測・開示する基準。
        大分類 小分類 融資残高
        (百万円)
        炭素強度
        (t-CO2/百万円)
        排出量
        (t-CO2)
        エネルギー 石油及びガス 39,289 5.3 209,741
        石炭 1,285 44.1 56,741
        電力ユーティリティ 87,129 6.9 597,173
        運輸 航空貨物 24 1.5 36
        旅客空輸 2,555 8.1 20,605
        海上輸送 406,898 4.5 1,842,285
        鉄道輸送 27,335 0.5 12,649
        トラックサービス 35,554 5.3 187,368
        自動車及び部品 37,098 3.9 144,033
        素材・建築物 金属・鉱業 42,400 9.5 401,975
        化学 75,357 3.7 281,496
        建設資材 17,914 25.3 453,520
        資本財 339,511 4.5 1,514,910
        不動産管理・開発 219,095 0.3 64,133
        農業・食料・林産品 飲料 5,311 1.8 9,573
        農業 5,714 17.8 101,546
        加工食品・加工肉 51,493 6.7 343,025
        製紙・林業製品 40,443 5.7 231,298
        その他 その他 730,072 2.0 1,494,087
        総計 2,164,475 3.7 7,966,196